プレビュー
確定拠出年金制度は、スタートしてから今年で満11年を経過した。企業型確定拠出年金制度の承認規約数は、2013年1月末現在で4,192件、加入者数約4,377千人、実施事業主数は16,874社に達している。適格年金からの移行が収束して普及スピードが落ちているとはいえ、企業型確定拠出年金の制度加入者数は、厚生年金基金の加入者数に肩を並べる水準まで増加している。
運用環境の悪化、国際会計基準(IFRS)への対応及び厚年基金からの脱退などを考えると、確定給付型企業年金から企業型確定拠出年金制度への流れは、今後も止まることはない。
しかし、確定拠出年金制度がアメリカにみられるように企業年金制度のメインとなるためには、大きな課題・限界性を抱えている。柔軟な制度設計を阻む「拠出限度額の設定」、「中途解約の制限」、「自動移換問題」、「企業型と個人型の制度分離」などが、当該制度を企業が本格活用する際の大きな壁となっているからである。もし、これらの制約がないと仮定した場合、制度導入企業数だけでなく、確定拠出年金への拠出金額や対退職給付制度移行割合などにおいても、現状以上に増えているに相違ない。
とはいえ2011年は、企業型確定拠出年金制度の歴史にとって、大きな節目の年として記憶されることになろう。なぜなら、2011年8月4日、年金確保支援法(正式名称:国民年金及び企業年金等による高齢期における所得の確保を支援するための国民年金法等の一部を改正する法律)が成立、企業型確定拠出年金において①加入資格年齢の引き上げ(60歳→65歳)、②従業員拠出(マッチング拠出)可能、③事業主による従業員に対する継続的教育の実施を明文化、などの改正がなされたからである(但し、施行時期はそれぞれ異なる)。
この3つの中で企業およびその従業員にとって特に影響が大きいと考えられるものは、②マッチング拠出といわれている。マッチング拠出は、長年にわたって企業年金連合会及び経済関連団体、金融業界などからの導入要望が強く、また導入企業の側からも、従業員の確定拠出年金制度に対する関心を高める効果があるとして強い期待が寄せられていた。しかし、この従業員拠出(マッチング拠出)の中身を見ると、労使合わせた掛金額の上限は現行と変わらないだけでなく、従業員拠出額は、会社拠出額を超えてはいけないとの制限がある。このため、会社拠出額が少ないと思われる20代・30代の社員にとって自ら拠出できる金額は少なく、会社拠出額が多い40代・50代の社員にとっても会社の拠出額と拠出限度額の差が小さいため、マッチング拠出額はそれほど多くはない。つまり、現在の制度設計においては、マッチング拠出そのものの魅力があまり感じられないかもしれない。加えて企業(担当者)からは、個人拠出額をめぐるル-ル作り、給与計算システム改正、拠出金管理、教育・コミュニケーション実施などの事務負担、費用負担が増える可能性があることから、“早期の導入を見合わせたい”との声も聞かれる。
・・・続く
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